きみのこと、極甘にいじめたい。
わざとらしい声のあと、



理太がつまんでいるメモの端に、ちりっと着火した炎が、


細く黒い煙を漂わせながら、あっという間に紙全体へと燃え広がっていく。




――ぽとん、と理太の指を離れ、灰皿に落ちた紙が燃え尽きるのを、



あたしと理太は理科の実験でも眺めているかのように、見送る。



火が消えて、ようやくハッとした。



「も、も、燃やした―!!メモ、燃やしちゃったー!!」



なにしてくれてんの、この男!?



真っ黒の小さな灰になったものと、理太を交互に見ると、理太は悪びれる様子もなく……。



「だって素直は恋に無頓着なんだよね?」


「え……うん」


「じゃあ要らないじゃん」



「でも、話題的に今は必要だったんだよ……!」



「話題づくりって? なんか必死だねー?」


「いー、むかつく」



憐れむような顔しちゃってるけどさ、あたしがこうも友達との関係に怯えるようになったのは、理太のせいなんだよ!?



理太のせいで、友達ひとりもいなくなったんだから……。



「……なんか。素直ってそんなんだった?」



静かな瞳が、あたしの心の奥に触れそうな気がした。



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