きみのこと、極甘にいじめたい。
「ねー、理太くんって彼女いるの⁉︎」


気づけば机の周りを女子が埋め尽くしていてびっくりした。


「彼女はいないよ」


「きゃー、そうなんだ! ね、よかったら今日うちらが学校の中、案内しようか!?」


「いいの?」


「もちろんっ」


転校って二回目なんだけど、こんなふうにあたたかく迎え入れてもらえると、気が楽になる。


俺もしかしてちょっと緊張してたのかも。


ホッとして、思わず笑みがこぼれた。


席についたまま、ここにいる女子たちを見上げる。



「親切な子たちのいるクラスに入れてよかった。……ほんとにありがとね」



「っっっ!!」



なんでみんな苦しそうな顔して押し黙ってるんだろう。レスポンスないのって寂しいよ?



まあいいや、と、
囲む女子達の隙間から見てみると、
素直は仲いい友達と笑ってる。



相変わらず明るいし普通に人気者だと思う。



って、素直、ふつうに男と喋ってるじゃん。



なんで俺だけダメ?


同居黙っておけば、別にしゃべるくらいよくない?



腑に落ちない。


だってそういう特別扱い、求めてないからねー。



遠目に見る素直たちの輪はかなり盛り上がってる。



「じゃあ今日みんなで素直のバイト先行こうぜ!」


「えー来てもいいけど、あたし権力ないから全然サービスとかできないかもよ?」


「そんなの期待していくわけじゃないって! 素直が働いてるとこ想像つかないから見たいんだもん!」


「わかる!俺もみたい」



わっと盛り上がるあの辺を見て、胸の奥がちりちりする。


「……」



俺は立ち上がって、素直のところまで歩みを進めた。



「えっ! 理太くん、どこ行くの!?」



と俺を囲んでいた女子たちが言っているのに、「ごめん、すぐ戻る」と軽く笑って。



いらだちを押し殺した笑みを、素直にあげる。



< 47 / 131 >

この作品をシェア

pagetop