きみのこと、極甘にいじめたい。
あたしが何よりも大事にしているのは、友達の輪の中にいること。
と、言うのも、私は転勤族の娘で、何度も転校した経験がある。
馴染めずにいた教室で、どうにか友達の輪に入れた時の感極まるような喜びは人一倍味わってきたし、友達っていうのは無くてはならない大切な存在。
でも、友達って関係の希薄さだって、あたしは知ってる。
毎日笑いあっていても、些細なことで簡単に壊れるんだ。
――例えば、"同じ人を好きになった"。
なんて、そんなくだらない理由でもね。
ふと脳裏に甦るのは、手のひらを返すようにあたしを責める「元」親友たちの声。
『ねー、素直ちゃん、なんで告白したの?』
『素直ちゃん、そう言うの、ぬけがけっていうんだよ』
『サイテー』
『まりあちゃんの方が、ずっと前から好きだったのにね』
中1のころ、クラスで人気だった好きな人に告白して、こっぴどく振られたのに、さらに友達にまで嫌われた。
その日を境に、あたしが知らぬ間に傷つけた相手である “まりあちゃん”は、可哀想と皆からなぐさめられて、あたしは存在ごと無視されるようになったんだ。
そんなあたしを見たときの、まりあちゃんの勝ち誇ったような笑顔が忘れられない。
ちょうどそんなゴタゴタの最中、運良く転校することになってホッとしたけれど……。