きみのこと、極甘にいじめたい。
思わず、ぽかんとしてしまう。


「はぁ?」


センスいいね。


いや、違う。待って。


「な、なんで、ほっぺにキス?」


「お詫びにチューっていうのは、よく聞くから」


「……。どこで聞いたの」


素直がスッと指さした先には、床に転がっている少女漫画たちだ。


最高の指南書、読んでるんだね。



「く、口は無理だからね! あたし、ファーストキスだから……!」



なにこいつ。まじなのかな。



ごくっと、唾をのみこむ俺の余裕なさを呪いたい。



「じゃあ理太、……行くよ?」



かちこちに固まった俺は、頬に、柔らかな感触をかんじた。



――ちゅ。


ドクンばクンゴトン。


心臓がやばい。


こうやって俺、あっさりと殺されるのかもしれない。



< 57 / 131 >

この作品をシェア

pagetop