きみのこと、極甘にいじめたい。
「……はぁー……。緊張したぁ。こんなこと理太は平気するんだから、悪い子だよね!」
あはは、っと笑うその表情は、屈託ないあの頃のまま。
ドキドキと心臓を鳴らしながら、その顔がずっと続けばいいって、やっぱり思った。
「……ねぇ、素直は、誰かにひがまれたことがあるの?」
俺の質問が、この空気を壊すことくらいわかってるけど、言わせて。
「え、」
「昼に言ってたじゃん。何があったのかなって気になって……、答えたくなかったらもちろん答えなくていいんだけど」
人の心に土足厳禁。だから靴は脱いで入ったつもりが、靴下くらいは脱ぎ忘れちゃったかもしんない。
でも、素直のことだから、知りたいって思うんだよ。
自然と素直の笑みが消えていく。俺の目を静かに見据えて。
「……僻まれたことは、あるけど……内容は理太には言わないよ」
「そっか」
「それに僻まれたって言っても、そんなに大げさなことじゃないんだよ。人によっては、『そんなのどってことない出来事じゃん!』って笑っちゃうかも。そんなことで、あたしは……」
そこで言葉に詰まった素直の頭を、そっと撫でた。泣きそうな顔は見ない。
「ん、わかった。聞いてごめんね」
……何があったのか、俺にはわかんないけど。