きみのこと、極甘にいじめたい。







朝5時。


――パチ。


目をあけると、理太がそこにいた。

目の前に居た。



「ぎゃあああ!!」


「……おはよ、うるさ……」



耳を塞ぐ理太は、あたしに抱き着かれている。



もう一度叫びながら、理太を跳ね飛ばしてあたしは起きた。


「痛……」


「ごめん……! そうだ、忘れてた。昨日はあたしが理太にお願いして一緒に寝たんだよね……」



って、待て。




「違う! また騙したんでしょ! あの音の正体、理太なんでしょ!?」



そう聞けば、悪びれることなく縦にうなずく、この悪魔……。



「俺のいたずら心を煽ってくる素直が悪いと思うけど」



「な、理太って最悪……っ!」




むっと口を尖らせたら、理太は目をほそめる。



「仕方ないじゃん……かまいたくなんの」



――ドキン。


そんなこと……言われたら。




「だってどんな簡単な罠にもはまってくれる逸材だからねぇ、素直は」



寝ころんだまま、こちらに手を伸ばしてきた理太は、つーっと親指で頬を撫でてきて、にやり……。



……このやろう。



「って何よこの手は……!」



パシっと叩き落としてしまうほど、余裕ないあたしを、理太は笑う。



「痛……。ねー、前も言おうと思ったけどさ、人って叩いちゃだめなんだよ?」



そんな教育を施しながら、しれっと……



――ちゅ。


唇の柔らかさが手の甲に触れて、寝起きの心臓が混乱してる。



「な……っ!」



火に触っちゃったような勢いで手をひっこめて、口をぱくぱくさせる忙しないあたしを、彼の上目がやけに色っぽく捉えた。



「……起こして?」



ドキ。なんだこれ……。


なんでこの人ってこんなに破壊力があるの……!?


魔法使い理太の言葉に従わされて、理太を引き起こした。



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