きみのこと、極甘にいじめたい。
麻子さんに「一緒にケーキ作ろ! 娘がいたら一度やってみたかったの……!」とお願いされたんだ。
で、せっかくなら、理太の望むケーキと、望むプレゼントをあげたいって、やっぱ思うじゃん。
誕生日は主役を喜ばせてなんぼの日だからね。
「おはよっ、理太! 実は今から麻子さんと林檎を使ったケーキ作ろうと思ってるんだけど……」
片手につやつやした真っ赤な林檎を抱えておくのがポイント。
「ケーキって……もしかして俺の誕生日だから?」
「せいかーいっ。そこで、理太は何パイが食べたい?」
「……アップルパイ」
驚かせてしまうかもしれないけど、じつはこれは巧妙な誘導尋問なんだ。
なんと、答えはアップルパイしか用意されてないの。
なぜかというと、麻子さんが「理太はアップルパイが好きだったから」と昨晩のうちに材料を用意していたから。
でもあたしは、数日前に聞いてしまっていたんだ。
『理太はバースデーケーキ、何がいい?』
『んー、ケーキじゃなくて激極堂のプリンがいい』
母の愛を無碍にできますか?
あたしはできません。
――ということで。
「アップルパイでりょうかいです♡ 麻子さん! やっぱり理太、アップルパイがいいって!」
「だと思った~♪」
麻子さんとのお菓子作りは本当に楽しい。
お母さんって感じはよくわからないけど、麻子さんとは友達みたいな感覚だ。