お隣さんは裏アリ王子
別れたってことで、いいと思う。


「大丈夫か?紗里奈」


「斗真、ありがと」


こんな状況でも泣かない紗里奈は、強がりだと思う。


「ほんと、昔から泣かないよな。俺にくらい見せてくれよ。涙」


どこか切なそうな如月君の声と言葉は、紗里奈に涙を流させるのには、十分だったみたい。


「とう、まぁ……」


私はその時、初めて紗里奈の涙を見た。


「私、ちゃんと……好き、だった、のにぃ」


「ああ」


頭を撫でながら、紗里奈を抱きしめた如月君は、さっきの人よりずっと、紗里奈の彼氏に見えた。


私は、その場を立ち去り水瀬君がいるであろう私たちの荷物置き場へ向かった。


「一人で駆け出すとか何考えてんだよ」


相当、お怒りのご様子。
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