お隣さんは裏アリ王子
「痛い」


離してよ、って意味も込める。


「とりあえず、俺ん家来い」


焦ったように水瀬君が言うから、思わず顔をあげる。


「なんで」


「泣いてるだろうが」


「え?」


自分の頰に触れると、涙で頰が濡れていた。


どれだけ家で泣いてても、誰かの前では一切泣かなかったのに。


「行くぞ」


ぐいぐい引っ張られるから何も抵抗できずに来た道を戻される。


どうして、今更……。


「入れよ」


「お、お邪魔します」


見覚えのある、あの部屋に通される。


もっと、女物のクッションとか増えてると思ったんだけどな。


あまり彼女のものは、置かない主義らしい。


「とりあえず、涙ふけよ」
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