お隣さんは裏アリ王子
「じゃ、行くか」


そう言われて、私たちは駅までの道を歩いた。


すぐ横に、水瀬君の手がある。


手、繋ぎたい……。


でも、水瀬君は?


あと数センチの距離が詰めれない。


思い悩んでいるとふと手が温かくなる。


「……え?」


手を見ると、水瀬君の手が私の手に伸ばされていた。


平然と歩いているけど、水瀬君の少し赤くなった顔を見逃すはずがない。


「ふふっ」


嬉しくなって思わず笑ってしまう。


「なにニヤニヤしてんだよ」


「んー、水瀬君が優しいなって」


そう言うと、水瀬君はそっぽを向いてしまった。


それでも、手を離すことはなくて。


「ふふっ」


私が笑うと水瀬君は驚いたようにこっちをみたけど、すぐに優しい表情になった。
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