お隣さんは裏アリ王子
さっき立ち上がったときに落ちたコートを拾い上げて、湊さんは歩いて去っていった。


「水瀬君……?」


何も言わない水瀬君に不安になる。


「誰だよ、あいつ」


「湊さん、バイトの先輩なの」


「文化祭にも来てたよな」


「うん、お兄ちゃんの友達で、お兄ちゃんの代わりに様子を見に……水瀬君?」


険しい顔でまだかすかに見える湊さんの後ろ姿を睨んでる。


「真奈は、俺の彼女だよな?」


「え?うん、そうだよ?」


「あんまり、俺以外の男に無防備になるなよ?」


そう言って水瀬君は、私には自分の着ていたジャケットを着せる。


「寒いでしょ?」


「彼氏面、させて」


そう言われたら、もうなんとも言えない。


大人しく水瀬君のジャケットを羽織って、私たちは家へと帰った。


お互い、ぎゅっと手を繋いで。
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