お隣さんは裏アリ王子
「離して、ください」


そう言うと、さらに強く手を掴まれる。


絶対聞こえてるじゃん。


「カバン、自分で持ちます……」


一切反応がない。


「あの……」


「ねえ、さっきからうるさいんだけど」


突然振り返った彼の表情に驚いた。


不機嫌さを隠さない口元、獰猛な瞳。


危険な人だって、直感だけで判断できる。


「いいから来いよ」


怖くて、身体がぎゅうってなる。


「真奈」


でも、そんな恐怖、すぐにどこかへ行ってしまった。


「圭……!」


「離せよ、その手」


めちゃめちゃ怒ってる。


「チッ」


圭の迫力に負けたのか、その人は舌打ちを残して去っていった。
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