毒舌魔王の可愛がり方。-六花の恋・外伝-【完】
「尚? 新垣さん、泣いてなかった――?」
「想! 肩貸せ!」
「お、おう⁉」
「美結! 新垣どっち行った⁉」
「え、エレベーターの方! 私も探す!」
松葉杖と想に助けられて、廊下を必死に歩いた。
このときほど走れないことをもどかしく思ったことはない。
俺より先にエレベーターの方に向かっていた美結が足を止めてから戻って来た。
「尚っ、あれ新垣さんかもっ」
病室を出ているから、美結が小声で喋りかけて来た。
美結に示されたのは、廊下の窓から見える中庭。
庭園になっていて、ベンチやテーブルが点々と置いてある。
ここは三階。何人か人が見える中、確かに新垣と思しき姿があった。
「想、あそこまで頼む。美結は想の回収に一緒に来てくれ」
「うん」
「わかった」
二人に支えられて、中庭まで降りることが出来た。
新垣は、木のそばに突っ立っていた。
「想、ありがとな。美結、想連れて病室戻っててくれ」