毒舌魔王の可愛がり方。-六花の恋・外伝-【完】
手術から二日後、病室でリハビリの順番待ちのために時間を持て余していると、ドアがノックされた。
特に申請したわけじゃないけど、四人部屋が埋まっているからってことで、俺は個室にあてられていた。
「はい?」
つまり、そのノックは俺に向けられたものだ。
応じると、そろそろとドアが開かれた。
「……?」
「あ、あの、お邪魔します……」
入って来たのは、隣町の中学の制服の女子だった。誰だ?
「この部屋、俺しかいませんよ? 部屋間違えてませんか?」
知らない女子だったからそう返すと、はっとしたように頭を下げて来た。
「私、新垣玲奈(あらがき れいな)っていいます。お話するのは初めてなんですが、藍田くんのこと、地区大会とかで見ていて知っていて……あ、塚原さんとはお話したことあります。ご迷惑だとは思ったんですけど、親戚がここに入院していて、藍田くんもいるって聞いて……お、お見舞い、に……」
随分大胆なことするなあ。下手すりゃ通報モンだぞ。
「そうですか。わざわざありがとうございます」
俺は、対保護者向けの猫被りで返す。
想と美結という飛び抜けた優秀モノたちの面倒見て来たからか、保護者ウケする態度を心得ていた。
おかげで俺は保護者には気に入られやすかった。
「新垣、さん? よかったらどうぞ」