あなたがくれた翼
表と裏
京子はこのことを知ってたから、桧山の肩を持つのだろうか。
嫌でも桧山の言葉を思い出してしまう。
『僕には同じに見えるよ』
私と京子が一緒に写ってる。
陸上と園芸はまるで違う。
だけど、三枚の写真を組み合わせて一枚の写真にすれば、それはもう作品と呼べるものだった。
でも、この写真は過去の私だ。
思わず涙を浮かべた。
もうあの頃には戻れない……
「神崎さん、こんにちは。お昼以来ね」
神山先生が何故、市民ホールにいるのかわからなかった。
私は目に浮かべた涙をさりげなく拭いた。
「受付の人とね、顔馴染みなの。神崎さんがここに見えたら私に連絡してほしいと、事前に彼女と話しをしたの」
「もう既に私は桧山君のモデルになっていたんですね」
「ごめんなさい。全て後手に回ったのよ。美術展で大賞を貰えたから、一度見て欲しいと桧山君に言われたの。そうしたら、神崎さんと三上さんの写真が掲載されてたから驚いたわ」
「桧山君らしいですね」
「三上さんは承諾してくれたみたいだから良かったのよ。でも、神崎さんには承諾を得てないと聞いたから、すぐにでも承諾を貰ってきなさいと注意したわ」
「それで、最近になって私に話しかけるようになったんですね。でも、桧山君は私にモデルになって欲しいと頼まれるけど、美術展の写真のことは一切口に出しません」
「それを聞いて困ったのよ。今日、神崎さんから桧山君の相談を受けた時に、裏目になったとわかったわ。私から謝ります。ごめんなさい」
私は大丈夫ですと先生に伝えた。
どこが大丈夫なのだろう。さっきまで私は泣いていたのに。
でも、この写真を見ると桧山を憎めないような気がした。
私がずっと眺めていたからだろうか、先生がふいに話しかけてきた。
「これはね組み写真と呼ばれるものなの。いくつかの写真を合わせて一枚の写真にすることよ」
「京子が綺麗に写ってますね」
「あら、神崎さんも綺麗に写ってるわよ」
「そんなことありません。あの時の私ではないです。今はもう走れないですから」
神山先生は口元に手を当てて、考え事をしていた。
同情されるのだろうか。
先生には困ることを伝えたかもしれない。
私の心はもう限界だった。
「そうだ、神崎さんに面白いものをみせるわね!」
そう言い残して先生は立ち去り、やがて受付の人と一緒に私の元に戻ってきた。
白い手袋をはめた、受付の人は額を両手で持ち裏側を私に見えるようにした。
私は驚いた。額の裏にも写真があったからだ。
それも一枚や二枚ではなく、大量に。
その写真は私と友達が写っていた。京子だけでなく、クラスの人も、陸上部の人たちも。
目で追いきれないほどだった。
恐らく全ての写真に私が写っている。私はどの写真も笑っていた。
気づいたことがあった。
これらの写真は、私が膝の怪我をした後で撮られたものだった。
恐らく、桧山の筆跡なんだろう。裏側にも題名があった。
『Everyone』と。
「走れなくても誰かと一緒に笑顔を向けることはできるんじゃないかしら?」
私は写真を見るまで、自分が笑っているとは思わなかった。
楽しい時間、楽しい自分を見失っていたのかもしれない。
まるでポケットにしまい込んだまま忘れていたかのように。
それは、皆がいてくれたから。
私はそれに気づかされた桧山に感謝した。
嫌でも桧山の言葉を思い出してしまう。
『僕には同じに見えるよ』
私と京子が一緒に写ってる。
陸上と園芸はまるで違う。
だけど、三枚の写真を組み合わせて一枚の写真にすれば、それはもう作品と呼べるものだった。
でも、この写真は過去の私だ。
思わず涙を浮かべた。
もうあの頃には戻れない……
「神崎さん、こんにちは。お昼以来ね」
神山先生が何故、市民ホールにいるのかわからなかった。
私は目に浮かべた涙をさりげなく拭いた。
「受付の人とね、顔馴染みなの。神崎さんがここに見えたら私に連絡してほしいと、事前に彼女と話しをしたの」
「もう既に私は桧山君のモデルになっていたんですね」
「ごめんなさい。全て後手に回ったのよ。美術展で大賞を貰えたから、一度見て欲しいと桧山君に言われたの。そうしたら、神崎さんと三上さんの写真が掲載されてたから驚いたわ」
「桧山君らしいですね」
「三上さんは承諾してくれたみたいだから良かったのよ。でも、神崎さんには承諾を得てないと聞いたから、すぐにでも承諾を貰ってきなさいと注意したわ」
「それで、最近になって私に話しかけるようになったんですね。でも、桧山君は私にモデルになって欲しいと頼まれるけど、美術展の写真のことは一切口に出しません」
「それを聞いて困ったのよ。今日、神崎さんから桧山君の相談を受けた時に、裏目になったとわかったわ。私から謝ります。ごめんなさい」
私は大丈夫ですと先生に伝えた。
どこが大丈夫なのだろう。さっきまで私は泣いていたのに。
でも、この写真を見ると桧山を憎めないような気がした。
私がずっと眺めていたからだろうか、先生がふいに話しかけてきた。
「これはね組み写真と呼ばれるものなの。いくつかの写真を合わせて一枚の写真にすることよ」
「京子が綺麗に写ってますね」
「あら、神崎さんも綺麗に写ってるわよ」
「そんなことありません。あの時の私ではないです。今はもう走れないですから」
神山先生は口元に手を当てて、考え事をしていた。
同情されるのだろうか。
先生には困ることを伝えたかもしれない。
私の心はもう限界だった。
「そうだ、神崎さんに面白いものをみせるわね!」
そう言い残して先生は立ち去り、やがて受付の人と一緒に私の元に戻ってきた。
白い手袋をはめた、受付の人は額を両手で持ち裏側を私に見えるようにした。
私は驚いた。額の裏にも写真があったからだ。
それも一枚や二枚ではなく、大量に。
その写真は私と友達が写っていた。京子だけでなく、クラスの人も、陸上部の人たちも。
目で追いきれないほどだった。
恐らく全ての写真に私が写っている。私はどの写真も笑っていた。
気づいたことがあった。
これらの写真は、私が膝の怪我をした後で撮られたものだった。
恐らく、桧山の筆跡なんだろう。裏側にも題名があった。
『Everyone』と。
「走れなくても誰かと一緒に笑顔を向けることはできるんじゃないかしら?」
私は写真を見るまで、自分が笑っているとは思わなかった。
楽しい時間、楽しい自分を見失っていたのかもしれない。
まるでポケットにしまい込んだまま忘れていたかのように。
それは、皆がいてくれたから。
私はそれに気づかされた桧山に感謝した。