あなたがくれた翼

傷つけられた写真

桧山の大賞に選ばれた作品が何者かによって傷つけられたのだった。
桧山の作品は美術展が終わると、部室に展示されていた。
誰もいない隙を狙った手口だった。
桧山は私といる時はきにしていない素振りだった。こんな時まで平静を装っていた。
私はひどく悲しんだ。それは多分、桧山が泣きたいと思ってるのと同じくらい、悔しい気持ちになった。
でも、こんな時だからこそ、私は桧山にできることをしたいと思った。
そんな私を見て、桧山は『ありがとう』の一言のあと抱きしめられた。
辛いよね。私は思わず自分の足の怪我をしたときのことを思い出した。
最近ではその出来事は薄れていた。桧山と一緒にいることで、思い出が塗り替えられたのだった。
桧山のために何かしたい。犯人が憎い。
どうしてこんなことができるのだろう。
桧山、せめて私の前では辛い顔をして欲しい。
楽しいことも、辛いことも一緒に分かち合いたい。
一人じゃないんだよ。

私は喉が渇いたので、中庭にある自販機でお茶を買おうとした時のことだった。
桧山と京子が花壇のそばで話をしていた。
神妙な顔つきだったので、こっそりと気づかれないよう近づいた。

「僕の写真を傷つけたのは三上さんだね」

私は思わず息を飲んだ
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