強引なキミに振り回された結果、恋に落ちてしまいました。
「……けほっけほっ」
これはしばらく掃除もされてない。
すごく部屋の中がホコリっぽい。
「あれって……」
薄暗い部屋の中に、ポツンと置かれたグランドピアノ。
近くに行ってみると、その上にもホコリが溜まっていて、随分前から使われていないことを物語っていた。
所々塗装もはげていて、年期も入ってそう。
軽くホコリを払って、椅子に座る。
重い蓋を開けると、白と黒の鍵盤が顔を出した。
ポロンと人差し指で鍵盤を押してみる。
ちょっと音がズレているかも。
こう見えて、小さい頃はピアノを習っていた。
先生が主催するコンサートにも出たこともある。
引っ込み思案なわたしからは想像もつかないかもしれないけど。
物心ついた時からから習い始めて、中学生になるまで続けていたこともあって"絶対音感"みたいなものは何となく身についている。
家にはまだ買ってもらったピアノは残っているけれど、鍵盤に触れたのは本当に久しぶり。
しばらく遠ざかっていたけれど、こうして触れてみるとピアノが弾きたくなってウズウズする。
「ちょっとだけなら、いいよね」
きっと怒られないし、こんな人気のない学校の端っこじゃ音も聞こえないはず。
そうして、ポロンとまた音を鳴らした。