強引なキミに振り回された結果、恋に落ちてしまいました。
1時間目の授業を知らせるチャイムが鳴り、名残惜しそうに女の子たちは自分の席へと戻って行った。
「七瀬ちゃんだっけ?下の名前はなんて言うの?」
普段、わたしに声をかける人はほとんどいない。
神風くんは珍しい。
「……さんずいに零って書いて澪です」
「へぇ、澪ちゃんね。澪って呼んでいい?」
「!?……い、いいですけど」
わたしのことを"澪"と呼ぶのは親と数少ない友達くらい。
会ったばかりの人にそう呼ばれるのは初めてのことで戸惑ってしまう。
「なんで敬語なの?俺たちクラスメイトじゃん、タメ口でいいよ」
「は、はあ……」
「え、澪って家来かなんかなの?」
わたしの返事にクスクスと笑う神風くん。
全くそんなつもりはなかったんだけど。
神風くんはずっとニコニコしていて、話しやすくて、面白くて……すぐに人気者になったことに納得した。
でももうそろそろ……解放してほしい。
じゃないと、周りからの目がとても痛いから。
空気のような地味な奴がイケメンと話すなんてありえない、そんな目で見られてる。