強引なキミに振り回された結果、恋に落ちてしまいました。


あらかじめ付けられていたピンマイクが神風くんの声を拾う。


すっと神風くんの左手がわたしの頭にまわり、近づいてくる整った顔。



「……っ!?」



言葉を失ったのはわたしだけじゃない。


きっとこの場にいたみんなだ。


神風くんが大量のケーキをわたしに食べさせたせいでついてしまっていた口元の生クリーム。


それをペロリと舐めたのだ。


予想外な神風くんの行動に、開いた口が塞がらない。


胸のドキドキが止まらない。



「か、神風くんっ!?」



やっと声が出たかと思えば、会場中が何とも言えない悲鳴に包まれた。


そんな声に消されながら、神風くんは「甘いものは苦手なんだよ」とたった一言呟いた。



それは甘いケーキを食べたくないからちょっとだけクリームを舐めたってこと?


いや、それでも!

やっていいことと悪いことが……



だって、ギリギリ避けていたかもしれないけどほぼキスみたいなもので……



それからのわたしの記憶は曖昧で。


気がつけばキラキラと舞う花吹雪に包まれて、「優勝おめでとう」と祝福されていた。






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