きみが空を泳ぐいつかのその日まで
「実は継人って親父の名前で、葵は実の母親の名前なんだ」
「そんな偶然……あるのかな?」
「だろ?だからなおさらモヤモヤして」
久住君も戸惑いを隠しきれていない。
「みどりさんに会えば、もしかしたら何かわかるかもしれない」
「みどりさんが? なんで?」
「とにかく行こう?」
気が急いて無意識に久住君の手を引いたら、彼の足許をふらつかせてしまった。
「うわ!」
「ごっ、ごめん!」
急ブレーキをかけたせいで前のめりになった彼にぶつかって、弾き飛ばされそうになるのを、久住君がしっかり掴まえてくれた。
「……大丈夫?」
腕を掴まれてすぐそばで声を聞いて、彼の体温や匂いに触れてふと思う。
久住君は、似ている。
お父さんと似ている。
そして……みどりさんにも。
それをたった今、肌で感じ取ってしまった。
「神崎さんていつもそんな?」
「ご、ごめんね。ほんとに」
見上げれば、久住君がため息をついて困り顔で笑っていた。彼の手は、まだ私の腕を掴んでる。
「あの、大丈夫だよ」
「ん?」
「もう手を、離しても」
もう片方の手は背中を支えてくれてたから、胸と胸がくっついてしまいそうな距離が急に恥ずかしくなってしまった。
「……ごめん」
ばっ、と離れてお互いが一歩ずつ後ずさりしたから、二人の距離が不自然に空いてしまった。
同じタイミングで彼と笑いあえたことがさっきまでは嬉しかったのに、なんでだろう。
どうして今は、泣きたくなってしまうんだろう
「そうだ親戚……久住君には親戚いない? 少し、歳の離れた、今のお母さんと歳が近いくらいの」
「なんでいきなり? いるかもしれないけど、会ったこともないよ」
「じゃあ、ほんとうのお母さんには?」
「あっち側の親戚とはあんまり付き合いなかったかも」
「そっか」
歩きだそうとする彼が、みどりさんと同じようにどこかへ行ってしまうような気がした。
「久住君、あのね」
その不安に耐えきれず、彼の方へと無意識に手を伸ばした時だった。
「触らないで!」
突然、後ろから大きな声がした。
迷わずこちらに駆け出して久住君に抱きついてきたその子の泣き出しそうな表情を見て、棒立ちになる。
「……エリ? なんで」
戸惑っている彼にしっかりと抱きついたまま、冷たい目で私を睨んだのは千絵梨だった。
何が起きたのか理解できないまま反射的に後ずさって、とっさにふたりから離れた。立っていられるのが不思議なくらいに、足がふるえてる。
千絵梨の目に捕らえられていると、彼に触れようとしていた自分の手がひどく汚ならしいものに思えて、それをあわてて引っ込めた。
「つぼみのせいだよ!」
「待って……なんの話?」
「全部つぼみのせいなんだって!」
いっぱいの涙をたたえた姉の目が、私を敵視しているように見える。
「なぁ、いきなり現れて何言ってんの。状況がまったく飲み込めないんだけど……」
久住君も私と同じくらい混乱しているはず。
「だってりー君のお母さんはつぼみを助けようとして死んじゃったんじゃん!」
「なに……それ」
その瞬間、世界が暗転した。
「そんな偶然……あるのかな?」
「だろ?だからなおさらモヤモヤして」
久住君も戸惑いを隠しきれていない。
「みどりさんに会えば、もしかしたら何かわかるかもしれない」
「みどりさんが? なんで?」
「とにかく行こう?」
気が急いて無意識に久住君の手を引いたら、彼の足許をふらつかせてしまった。
「うわ!」
「ごっ、ごめん!」
急ブレーキをかけたせいで前のめりになった彼にぶつかって、弾き飛ばされそうになるのを、久住君がしっかり掴まえてくれた。
「……大丈夫?」
腕を掴まれてすぐそばで声を聞いて、彼の体温や匂いに触れてふと思う。
久住君は、似ている。
お父さんと似ている。
そして……みどりさんにも。
それをたった今、肌で感じ取ってしまった。
「神崎さんていつもそんな?」
「ご、ごめんね。ほんとに」
見上げれば、久住君がため息をついて困り顔で笑っていた。彼の手は、まだ私の腕を掴んでる。
「あの、大丈夫だよ」
「ん?」
「もう手を、離しても」
もう片方の手は背中を支えてくれてたから、胸と胸がくっついてしまいそうな距離が急に恥ずかしくなってしまった。
「……ごめん」
ばっ、と離れてお互いが一歩ずつ後ずさりしたから、二人の距離が不自然に空いてしまった。
同じタイミングで彼と笑いあえたことがさっきまでは嬉しかったのに、なんでだろう。
どうして今は、泣きたくなってしまうんだろう
「そうだ親戚……久住君には親戚いない? 少し、歳の離れた、今のお母さんと歳が近いくらいの」
「なんでいきなり? いるかもしれないけど、会ったこともないよ」
「じゃあ、ほんとうのお母さんには?」
「あっち側の親戚とはあんまり付き合いなかったかも」
「そっか」
歩きだそうとする彼が、みどりさんと同じようにどこかへ行ってしまうような気がした。
「久住君、あのね」
その不安に耐えきれず、彼の方へと無意識に手を伸ばした時だった。
「触らないで!」
突然、後ろから大きな声がした。
迷わずこちらに駆け出して久住君に抱きついてきたその子の泣き出しそうな表情を見て、棒立ちになる。
「……エリ? なんで」
戸惑っている彼にしっかりと抱きついたまま、冷たい目で私を睨んだのは千絵梨だった。
何が起きたのか理解できないまま反射的に後ずさって、とっさにふたりから離れた。立っていられるのが不思議なくらいに、足がふるえてる。
千絵梨の目に捕らえられていると、彼に触れようとしていた自分の手がひどく汚ならしいものに思えて、それをあわてて引っ込めた。
「つぼみのせいだよ!」
「待って……なんの話?」
「全部つぼみのせいなんだって!」
いっぱいの涙をたたえた姉の目が、私を敵視しているように見える。
「なぁ、いきなり現れて何言ってんの。状況がまったく飲み込めないんだけど……」
久住君も私と同じくらい混乱しているはず。
「だってりー君のお母さんはつぼみを助けようとして死んじゃったんじゃん!」
「なに……それ」
その瞬間、世界が暗転した。