【完】無気力ですが、ベタ惚れ彼氏の溺愛方法に困ってます
「わっ……!?」
俯いていたその時、律くんがふわりと自分のマフラーを巻いてくれた。
「寒いからもう帰んな」
目線を合わせるように少し屈んで私の瞳を覗き込む。
いつも自然と一緒に帰っているけれど、別れる場所は決まって電柱のある十字路。
私の家は目と鼻の先で……。
律くんの家までは距離がある。
すぐに家に着く距離なのに、マフラーを貸してくれて、こういうところが律くんの優しいところで。
「そんな顔しないでくれる?」
「っ、してないよ! 大丈夫! ありがとう律くん!」
律くんのことをもっと知りたいなんて、わがままな気持ちを抱いてしまった。
顔に出てたかも……。
そんな今の私をこれ以上見られたくなくて、また明日ね、と慌てて踵を返した。
「帰したくないなんて言えるわけないか」
突き刺す二月の風は、いつもよりずっと痛かった。