【完】無気力ですが、ベタ惚れ彼氏の溺愛方法に困ってます


いよいよ劇の配役決めが行われる当日。

会長様は演劇部のみんなといい感じに打ち解けていて、なんだか楽しそうだった。


そんなみんなの姿を遠目に眺める私は……


「ね、ねぇ冬夜……あんな子ウチのクラスにいたっけ?」


「な、なに言ってんだよ玲来! お前の親友の……いや、待て。誰だ……?」


お前は誰だ!?と矢坂くんが戦慄(せんりつ)する。


「……言葉も出ない」


絞り出した私の声に二人は若干引き気味ではあったけれど、恐る恐る近づいてきた。


「あのさ……、この場所に未練がある亡霊にしか見えないんだけど」


「つぅか、一気に老けたな……西宮大丈夫かよ……」


最初、二人に認識さえしてもらえないほど、今の私は亡骸と化していたのかもしれない。
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