【完】無気力ですが、ベタ惚れ彼氏の溺愛方法に困ってます
演出に拘る会長様は、演劇部のみんなと打ち合わせ中だ。
「もう一回する?」
「うん……」
「なにその顔」
私の顔を覗き込んだ律くんが眉をひそめた。
「だって律くん、この物語すごく悲しいんだよ?」
「は」
「記憶をなくしたヒロインに、“君のことが好きだから、別れよう”って言うの! 好きなのに……」
「……設定だろ」
「どれだけ時間が流れても、自分のことをひとつも思い出してもらえなくて、きっとこの男の人も苦しかったんだと思う……」
「……」
山神様の実話じゃないことを祈りながら、律くんの呆れ顔を見つめた。