【完】無気力ですが、ベタ惚れ彼氏の溺愛方法に困ってます
「えと、もしもだけど……私が記憶をなくしたら……律くんは、どうするのかなって」
ふと思ってしまったことを素直に聞いてみた。
「劇の話? だったら別れるんじゃない?」
「………別れる? 嘘……そ、そんなぁ!」
練習中の会長様を律くんだとして想像してみると、魂が抜けていきそうだった。
「……だから劇の話だろ」
「私は、そんな悲しいのやだなって……」
「そういう結末を用意した山神に言えば」
すっと立ち上がった律くんは「集中しろって方が無理だろ」と呆れ口調で去っていった。
あ、あんまりだ……!
劇の話とはいえ、山神様の実話じゃないといえ、別れるなんて!
塩! 塩! 塩!
律くんの背中に向かって、私は塩を連呼した。