【完】無気力ですが、ベタ惚れ彼氏の溺愛方法に困ってます
練習中の律くんとの会話が脳裏に蘇ったから。
──“えと、もしもだけど……私が記憶をなくしたら……律くんは、どうするのかなって”
──“劇の話? だったら別れるんじゃない?”
そう言っていたのは律くんなのに……。
溢れた涙は止まることはなくて、私の頬を濡らした。
悲しいからじゃない。
幕が降りるまで抱きしめ続けてくれた律くんの優しさが、堪らなく嬉しかったから──。
* * *
まだ緊張と嬉しさで身体の熱は引かない。
無事に成功を収めてステージの裏に引っ込むと、
「俺の作った脚本じゃダメだったのか……」
ただでさえ狭いステージ裏だというのに、誰よりもデカい図体をした山神様が体育座りをして小さくなっていた。