【完】無気力ですが、ベタ惚れ彼氏の溺愛方法に困ってます
「なんで……?」
聞きたいと願った律くんの声が聞こえる。
今度こそ、夢だ……。
こんな夢みたいな展開、そう何度も起きるはずがない。
「なんでって、なにそれ」
ハァッ……と、肩で息をして、呆れた顔をした律くんが目の前にいる。
「律くん……?」
だって、どうして律くんが……?
今までに起きたこともない展開に、私は目を見張った。
「……なんで俺が走ってきたかわかんないの?」
「……わ、わかんない」
なんでって言われても、私はこんなに息を切らした律くんを見るのは初めてで。
入試の朝だって、ここまで全力ではなかったと思う。