【完】無気力ですが、ベタ惚れ彼氏の溺愛方法に困ってます
「これはその、球技大会で、ちょっとドジしちゃって……」
「俺が見る時、西宮っていつも走ってる」
律くんが見る時って……。
私のことを見てるのか、それとも落ち着きないから嫌でも視界に入ってしまったのか。
どっちだっていい。
律くんの視界に入っているから。
名前を知ってもらえているんだから。
胸がいっぱいになって動けずにいると、カバンを持っていた私の右手が軽くなった。
「律くん……っ?」
「家どっち?」
呆気にとられた私が指をさすと、スタスタと歩き出した。
「あのっ、カバン……」
「持つから。西宮は歩いて」
ゆっくりでいい、と付け加えた律くんは、私の歩幅に合わせて歩いてくれた。