翠玉の監察医　ナイトメア
解剖室に一歩入った刹那、圭介たちの顔に動揺が浮かぶ。蘭は何も感じないようにし、解剖室の台へと近づいた。

解剖室の冷たい台に寝かされていたのは、ゼルダと同じ病室にいたトメだったからだ。

動揺を隠し切れない三人に対し、碧子は冷静に「三人とも、外に出ていなさい」と声をかける。動揺している状態では解剖などできない。むしろミスをしてご遺族をさらに傷付ける可能性がある。

「で、でも……！」

圭介が何かを言おうとしたが、蘭は素早く三人の前に立ち、圭介の背中を押して無理やり解剖室の外へと押し出す。小柄な体からは想像できないような強さに、アーサーとマルティンは驚いていた。そして渋々解剖室の外へと出る。

「今回は私と碧子先生に任せてください。このような状態で解剖をするなど、故人にとっても、ご遺族にとっても、大変失礼なことです」

無表情で放つ蘭の言葉は、未だに信じられないと言いたげな三人の心に傷を作っただろう。圭介は悲しげな目を向け、アーサーは蘭に対して嫌悪感を表す目を向け、マルティンは何かを言いたげだ。しかし、蘭はそれを気にすることなく解剖室のドアを閉める。
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