翠玉の監察医 ナイトメア
時計の秒針が進むごとにカチカチ音を立てる。蘭の手元の書類がもうすぐ完成するという時、「あの!」と緊張でうわずった声がかけられた。

「はい。どうかされましたか?」

蘭が顔を上げると、恥ずかしそうに顔を赤くした圭介と目が合う。圭介はスウッと大きく息を吸った後、口を開けた。

「あの!よかったら一緒にご飯、行きませんか?」

おいしいお店、知ってるんですよ。そう圭介は言った後に写真を見せてくる。どうやら魚料理の専門店のようで、おいしそうな刺身や魚の唐揚げの写真が次々と目に映った。

「あっ、嫌だったらいいんですけど……」

圭介はそう言い、俯く。蘭は「いえ、構いませんよ」と答えた。今日は碧子はいないため、家に帰っても夕食は蘭一人で食べるしかない。

「やった!ありがとうございます」

圭介は嬉しそうに笑い、蘭も少し微笑む。そして星夜と外食をした時のことを思い出す。シャツの胸元で今も輝いているブローチをもらった日のことだ。
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