翠玉の監察医 ナイトメア

蘭が夕食を食べに行くと言ってから、圭介のレポートを書く手はいつも以上に早くなり、あっという間に終わった。そして「さあ行きましょう！」と子どものように目を輝かせている。

「ウツボの天ぷらとか、アンコウの肝とかレアなものも食べられるんですよ。とってもおいしいんです！」

駐車場に向かう間、蘭は圭介にこれから食べに行くお店のことを教えてもらっていた。テレビで紹介されたこともあり、県外からも多くのお客さんが来るらしい。

「あっ、でも女の人ってやっぱりおしゃれなフレンチとかの方がいいんですか？」

思い出したかのように不安げに言う圭介に、蘭は「私は何でも食べますしお供いたします」と答える。その時、「あの！」と声をかけられた。

「世界法医学研究所の方ですか？」

そう訊ねる男性は、グレーのスーツを着て緊張したようにかばんを握り締めている。蘭は「そうです」と答え、「何かご用でしょうか？」と訊ねた。