翠玉の監察医 ナイトメア

将暉の瞳が潤み、ポタリと雫が落ちていく。蘭はハンカチを差し出し、「今、警察の方が捜査を続けてくださっています。もうしばらくお待ちください」と答える。そう言うしかできないのだ。

将暉はそれから、トメとの思い出をたくさん話してくれた。仕事に忙しい両親の代わりになってくれたこと、病気になった時にずっとそばにいてくれたこと、勉強を教えてくれたこと、習字の先生をしていてその影響で自身も習字の先生になったことなど、温かい思い出がたくさんある。

「素敵なおばあちゃんだったんですね」

圭介が微笑み、将暉は「はい！世界一のおばあちゃんでした」と泣きながら笑う。そして俯く。

「だから、こんなことをした犯人を許せないんです」

蘭のハンカチは、将暉の手の中で強く握り締められていた。

「また何かありましたら、いつでもお越しください」

蘭はそう言い、世界法医学研究所の名刺を渡す。将暉は「ありがとうございます」と言い、それを受け取った。