翠玉の監察医　ナイトメア
四　記憶
ゼルダが復活してから一日経った。蘭はいつものように出勤するために車を走らせ、世界法医学研究所に到着する。今日も解剖が入っているため、忙しくなりそうだ。

「おはようございます」

蘭が部屋に入り、いつものように白衣を羽織ると、「蘭！今、とっても怖い事件が起きてるみたい」とゼルダがテレビの前に蘭を連れていく。アーサーにマルティン、圭介もテレビ画面を見つめていた。

交番が黒ずくめの格好をした男性に襲撃され、警察官の持っている拳銃が奪われてしまったらしい。男性は今も拳銃を手にしたまま逃走中だとキャスターが伝えていた。

「この事件のせいで、近隣の小学校とかは急遽休みになったらしいな」

マルティンがそう言い、コーヒーを口にする。アーサーは「警察、何やってんだよ。銃を一般人に奪われるとか……」と文句を言っていた。

「そういえば、この交番ってゼルダさんの入院していたあの病院からそんなに遠くないですね」

圭介がポツリと言い、ゼルダが「確かにそうだね」と返す。蘭の胸がドクンと嫌な音を立てた。想像だが悪いことしか浮かばない。その時、蘭のスマホに電話がかかってきた。桜木刑事からだ。
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