翠玉の監察医 ナイトメア
「蘭、みんな!!来てくれたの!?嬉しい!!」

病衣を着て点滴をしているゼルダが明るく笑う。ゼルダのそばには椅子が置かれており、そこに背中の曲がったおばあさんが座っていた。

「こんにちは」

おばあさんはニコリと笑い、蘭たちも挨拶を返す。

「この人は春川トメさん。病室が一緒だからいつもお話ししてるの!すぐに仲良くなれたわ」

ゼルダがおばあさんーーートメを紹介し、トメは「こっちこそ話に付き合ってもらってるよ」と笑う。

「どこの具合が悪いんですか?」

マルティンが訊ねると「胃にね癌があるの」とトメは答える。しかしその顔は優しいものだった。

「トメさんね、すごいのよ!手芸がとっても上手なの!ほら!」

ゼルダがトメの作った作品を見せてくれる。手作りの干支の置き物や赤ずきんなどの童話をイメージしたものまで、繊細で可愛らしいものばかりだ。

「可愛い……」

「すげえな、ばあちゃん」

マルティンは目を輝かせ、アーサーはトメを褒めちぎる。トメは「こんな年寄りを褒めたって何も得しないよ」と言いながらも嬉しそうだ。
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