翠玉の監察医 ナイトメア
圭介が頭を下げ、蘭たちもお礼を言う。トメは「いいのよ。私も楽しかったわ」と笑った。ゼルダはグッと体を伸ばして口を開く。

「私もすっごく楽しかった!またみんなで手芸しようね」

早く元気になれよ〜、とアーサーが言い病室のドアが閉まる。

「早く帰ろう。明日も仕事だ」とマルティン。

「夕飯、何食べようかな〜」とアーサー。

「神楽さん、行きましょうか」と圭介。

蘭は頷き、歩き出す。もう家では碧子が夕飯を作っているだろう。

しかしある病室の前を通りかかった時、蘭は再び足を止める。すすり泣く声が聞こえてきたからだ。

「昨日まで元気だったのに……。心停止したって……」

元気だった人が亡くなったーーー。こうなった時、死因を知りたいと解剖を依頼してくる人もいる。この人ももしかしたらーーー。

「神楽さん?」

蘭の横顔を圭介が見つめる。圭介だけではない。アーサーやマルティンもだ。

「いえ、なんでもないです」
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