人魚と蜘蛛
時は戦国。小さな手のひらほどの昔話。

海と森が広がる、小さな村はずれに人知れずひっそりと小屋がひとつあった。

「美国様。」

薪を抱えた少年が名前を呼ぶ。色の白い女性。尼のようだ。

「浦和はずいぶん大きくなったわね。」

「お帰り兄さん!」

「かなの方が大きい!」

「ずるいずるい。」

「まなとかなは静かにしてなさい。」

そんなやり取りが夕闇に響き、夕飯の匂いがしていた。

人間がいる。ここなら騒がれても多少いいだろう。我慢できない。

だが、「キナ臭い。」

煙の匂いだろうか。

いやそれは今どうでもよい。腹ご満たされるなら。

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