あなたの願い、残酷に叶えます。
☆☆☆

そして、今。


暗い室内、なにかの気配を感じてあたしは息を殺した。


何度電気をつけようと試みても全く反応せず、辺りは暗闇に包まれていた。


どういうわけかさっきまで入り込んでいた太陽の光までなにかにさえぎられている。


室温が急激に下がり、身ぶるいをする。


この部屋の中になにかがいる……!


あたしはタブレットの明かりだけを頼りに机まで戻り、椅子を両手に持った。


なにかの気配が部屋の中に充満している。


ともすれば、それの息使いまで聞こえてきそうだ。


あたしは息を殺して集中した。


そこだ!


なにかが蠢いている気配へ向けて、椅子を振り下ろした。


ガツンッ!


なにもないはずの空間に、確かな手ごたえを感じた。


何度も繰り返し、同じ場所に椅子を振り下ろす。


ガツンッ! ガツンッ! ガツンッ!


2度、3度、4度。


繰り返している内に相手が崩れおちたのがわかった。


やった!


心の中でガッツポーズを取り、椅子を置く。


ちゃんと手ごたえがあるということは、これは実在するということだ。


「あんた、里奈でしょ」


薄明かりの中、あたしは倒れているワンピースの女に近づいた。


「昨日のアレに気がついて、あたしたちをビビらせるために来たんでしょう?」


相手は答えない。


少しも身動きしないから、気絶しているのかもしれない。
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