あなたの願い、残酷に叶えます。
1人、リビングでテレビを見ていたあたしは驚いて振り向いた。


いつの間にリビングに入ってきたんだろう?


誰の気配も感じなかったし、なにより玄関にも窓にも鍵をかけてあったはずだ。


あたしは咄嗟にテーブルの上の灰皿を持って立ちあがった。


女から距離を置くために部屋の奥へと移動する。


女はなにも言わず、ユラユラとこちらへ近づいてくる。


「あんた誰よ!?」


声を荒げるが、やはり返事はない。


あたしは灰皿を手にしたまま体を横へ移動させ大きな窓に手をかけた。


鍵を上げて窓を開けようとする。


しかし、その窓はビクとも動かないのだ。


「うそ、なんで!?」


灰皿を床に落とし、両手で窓に手をかける。


しかしやはり動かない。


女は徐々に近づいてくる。


顔は見えないのに、それが恐怖の対象であることだけは理解できた。
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