あなたの願い、残酷に叶えます。
「こないで!」


あたしは床に落とした灰皿を手に取って女に投げつける。


灰皿は女の横と通り過ぎて落下した。


その時、女がなにか言っているのが聞こえてきた。


静かなリビング内でも、更に耳を澄まさなければ聞こえないような声。


ね……を……やって……。


ね……を……やって……。


「な、なに……?」


その声は歪み、震えて、部屋中にこだまし始める。


女が近付くにつれて、その声は鮮明になっていく。


ねが……を……かな……やって……。


女はすでに目の前にいた。


逃げ出したいのに、足が固まってしまって動けない。


願いを叶えにやってきました……。


願いを叶えにやってきました……。


願いを叶えにやってきました……。


女がそう言っているのがハッキリと聞こえて目を見開いた。


声が歪んでいると感じたのは、それにメロディがついていたからだ。
< 118 / 244 >

この作品をシェア

pagetop