あなたの願い、残酷に叶えます。
やっぱり、紗弓は声も可愛かった。


アニメ声とはまた違うけれど、聞いていて心地いい響がある。


「どうぞ、その子を差し上げます」


今度は少し震えていた。


そっと目を開けて紗弓を見る。


紗弓はさっきまでと同じように、うつむいていた。


「どうぞ、その子を差し上げます……!」


紗弓の声が乱暴になった。


俺は不安になり、そっと画面に手を伸ばす。


触れられるのは画面のツルリとした感触だけ。


実際に泣いている紗弓のそばに行って、抱きしめてあげたいと願う。


だけどそれは叶わない。


俺たちはこの部屋から出ることもできないのだから。


紗弓がおえつを漏らして泣き始めた。


両手で顔を覆い、肩を揺らす。


「紗弓、続けて」


俺は優しく声をかける。


しかし紗弓は「できない!」と、左右に首を振った。


「大丈夫だよ紗弓。俺は怖くないから」


そう言っても、紗弓は幼稚園児のようにイヤイヤと首を振るばかり。
< 138 / 244 >

この作品をシェア

pagetop