あなたの願い、残酷に叶えます。
どうしてあたしが里奈を恨んでいたのか。


それが前から述べている通りの出来事があったからだ。


1年生のころ里奈に大智を寝取られ、3年に上がってからは推薦枠を取られた。


里奈はあたしから大切なものを次から次へと奪っていく。


でもそれらは里奈にとってさほど大切なものではないということも、あたしは知っていた。


儀式をする少し前のこと。


あたしは偶然大智と会っていたのだ。


「学校休みなのに、なにしてたんだ?」


近くの公園のベンチに座り、大智が聞いてきた。


「忘れてた課題を出してきたんだよ」


あたしは適当な嘘をつき、自販機で買ったコーヒーを飲んだ。


大智の手にもコーヒーの缶が握られている。


あたしは大智が持っているブラックコーヒーに視線を落とし、変わらないなと思った。


大智は中学生のころからずっとブラックを飲んでいる。


苦くないのかと聞くと、苦いのが美味しいんだと、大人ぶって言っていたのを今でも思い出す。
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