あなたの願い、残酷に叶えます。
「その人大学生でさ、金の車もあって、カッコよくて、俺、なにも言えなかった」


あたしはただ大智の話を聞いていた。


「その時は悔しかったし、悲しかった。でも……紗弓も同じ気持ちだったのかなって思ったんだ」


あたしは顔を上げて大智を見た。


大智は真剣な表情であたしへ向けて頭を下げる。


「あの時は本当に悪かった」


「そんな、やめてよ」


あたしは慌ててやめるように言い、大智の肩に触れた。


自分から触れたのに、久しぶりに感じた温もりにドキッとしてしまった。


「俺はいまでも里奈のことが許せないと思ってる」


大智は顔を上げ、悔しそうに歯ぎしりをしている。


「……あたしもだよ」


あたしはつい、本音を漏らしていた。


里奈はいつもあたしからなにもかもを奪っていく。


そして本人は平気な顔をして過ごしているのだ。


「俺、里奈と別れてから誰かを好きになるのが怖いんだ。また、なんの前触れもなく別れられたらどうしようって不安でさ」


「仕方ないよ。里奈はほとんど二股だったってことだよね?」


あたしの言葉に大智は頷く。
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