あなたの願い、残酷に叶えます。
おかしい……。


あたしは足早に階段を駆け下りて大通りへと向かった。


さっきから覚えている違和感は、お店に誰もいないことだけではなかった。


さっきから、なにも聞こえてこないのだ。


車の行きかう音とか、人の話し声とか、生活をしている上で必要な音など。


それに、鳥や動物の声すら聞こえてこない。


街全体が寝静まっているかのような静けさに包まれている。


夜中ですら、もっと音が聞こえてきているはずだ。


あたしはこんな街中にいるのに、静かすぎて耳鳴りを感じるほどだった。


「誰か、いませんか?」


大通りの中央で棒立ちになり、あたしは声を上げていた。


「誰かいませんかぁ!?」


声を上げながらグルリと周囲を見回す。


誰もいない。


動物の一匹もいない。


こんなのあり得ない。


だって今はまだ太陽が高い位置にある。


みんな動いているはずの時間だ。


「誰か、いたら返事をして!」


自分の声が建物に反射して戻ってくる。
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