あなたの願い、残酷に叶えます。
背中に汗が流れていくのを感じる。


ここはいつもあたしが暮らしている街で間違いない。


あのコンビニも、このファミレスも、電柱に張られている色褪せたポスターも、どれもこれも見覚えがあるのだから。


でも違った。


ここはあたしが暮らしている街であって、そうじゃない。


同じだけど全く違う。


ここは異質な空間だった。


まるで、悪意に満ちたパラレルワールドに飛ばされたような……。


呆然と立ち尽くすあたしの耳にカサッと小さな音が聞こえてきた。


ハッとした音がした方へ体を向ける。


それはファミレスの駐車場の、ずっと奥から聞こえてきた。


あたしはゴクリと唾をのみ込み、その先を見つめる。


しかし、なにも見えない。


なにもいない。
< 156 / 244 >

この作品をシェア

pagetop