あなたの願い、残酷に叶えます。
カサッ。


音だけが聞こえてくる。


「誰かいるの?」


声をかけて、あたしは一歩近づいた。


すると相手もカサッと音を立てる。


その音は少しだけこちらに近づいた気がした。


もしかしたら動物かなにかかもしれない。


人なら声を出しているだろうし。


そう思い、今度は大きく足を踏み出して音がする方へ歩き出した。


「誰?」


声をかけながら歩く、その時だった。


駐車場の奥。


なにもない、ただ灰色の壁があるだけの空間から、ヌッと白い人間が姿を現したのだ。


それは本当にヌッと、灰色の壁から出現した。


あたしは驚いてその場に足を止めた。


頭から布をかぶったその人の手や足がズルズルと壁から出現する。


「ひっ……!」


悲鳴が出た。


それが自分の声だと気がつくまで少しだけ時間が必要だった。


女の全身が壁から現れる。


同時にあたしはかけだしていた。
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