あなたの願い、残酷に叶えます。
女の足音はまだあたしを追いかけてきている。


あたしは数ある3年B組の前で立ち止まり、深呼吸をした。


このまま廊下を逃げていても意味はない。


いずれつかまってしまうだけだ。


それなら、どこかの教室に入った方がいい。


覚悟を決めて、ドアに手を伸ばす。


もしドアが開かなかったどうしよう?


一瞬そんな不安がよぎったけれど、ドアはすんなりと開いてくれた。


あたしはすぐに教室に身を滑り込ませてドアを閉めた。


鍵をかけ、その場にしゃがみ込んで息を殺す。


教室内は見たことのある光景だった。


みんなの席がある。


あたしの席もある。


本当にこの教室がどこまでもどこまでも存在しているみたいだ。


足音があたしのいる3年B組の前を右から左へと通り過ぎていくのがわかった。


あたしはホッとして全身の力を抜く。
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