あなたの願い、残酷に叶えます。
女の、布を被った顔がグッと画面上に近づいたかと思った時、その姿は嘘のように消え去っていた。


画面上に残ったのは死んでしまった充男の姿だけ。


あたしは口から飛び出してきそうな心臓をどうにか沈めて、深呼吸を繰り返す。


こんなのあり得ない。


こんなこと起こるわけがない。


きっと全部充男の演技だ。


この後笑いながら起き上るにきまっている。


しかし、いくら待ってみても充男は起き上がってこなかった。


相変わらず首と胴体は千切れたままで、さっきの女も出てこない。


「くそっ! タブレットの電源が切れない!」


翔の声が聞こえてきてハッと我に返った。


そうだ。


ぼんやりしている暇はない。


あたしはタブレットの電源ボタンに触れた。


微かな突起に揺れて長押しする。


しかし、画面はなにも変わらない。


「なんで、電源きれないんだけど!?」


「こっちも同じ!」


景子が返事をする。


他のみんなも電源が落ちなくなってしまったみたいだ。
< 35 / 244 >

この作品をシェア

pagetop