あなたの願い、残酷に叶えます。
こちらはその1時間のために着替えをしてメークをして、可愛くならなきゃいけないのに。


いっそ、画面の画質が悪かったらいいのになぁ。


なんて考えてしまう。


でも、今の技術でそこまで悪い画質のものは作られない。


スマホでも、もっと綺麗に、もっと高画質に、とずっと言われてきているのだから。


《麻子:あ、もう12時じゃん! ご飯食べてメークしなきゃ!》


麻子からのメッセージで時計に視線を向けると、いつの間にか2時間くらいが経過していた。


クラスメートとのメッセージは時間を忘れることのできるアイテムのひとつだ。


《紗弓:だね! また、授業でね!》


昨日まで学校で会っていたクラスメートたちと画面上で会うのは、なんだか不思議な気分だった。


自分の部屋の様子を見られたくないようで、背景には写真映像を合成している生徒もいた。


「なんだよ田中。お前パジャマじゃん!」


誰かの声で画面上を確認すると12分割された画面の右上にパジャマ姿の田中君が写っていた。


「違うよ、部屋着だよ!」


田中君は顔を真っ赤にして抗議する。


「え、それ部屋着?」


女子にまでそう言われて、田中君は更に赤くなっていく。


その様子を見てあたしは声を上げて笑った。


生徒の半分くらいはあたしと同じように制服姿だった。
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