南の島のクリスマス(十年目のラブレター)
「俺もずっと未来のこと探してた。」
「それはアタシ達じゃなくて…未来に言ってあげなよ。」


「ところで准…病気はもういいの?」
「ああ…もうバッチリだよ。だから戻ってきたんじゃんか。」
「あーっ…やっぱり都会っ子が言うと違うなあ、ね、田舎っぺちゃん?」


托を茶化す薫の目も夕日に照らされ輝いた。

「ふん!うるせえ!」
「みらーーい!」
波打ち際まで走る薫。


「准…」
「ん?何だよ托。急に改まって。」


「あのさ…准はまだ未来のこと…好きなんだよな?」

「どうしてそんなこと聞くんだよ。好きだから帰って来たんじゃねえかよ。」



「未来のこと…」
砂浜を冬の風が四人の間を吹き抜けた。


「幸せにしてやれよ。あいつ…健気(けなげ)にもずっとお前のこと待ってたんだからさ。この10年。」



「分かってる…」
「何だよ、その生温(なまぬる)い返事は…」
いつになく真剣な眼差(まなざ)しで准を見た托。



「ううん、何でもねえよ!未来は俺が幸せにするから。托は心配しなくていいよ。」



「ありがとな…托。」
托の背中をぽんと叩き、准と托、二人は未来と薫のところへ走って行った。


 薫が泣いていた未来を落ち着かせ、10年ぶりに4人で『ジローズ』でハンバーガーとラムネで昔話をして騒いだ。


       日本一綺麗な夕日が
    4人の顔をオレンジ色に染めた。


< 116 / 246 >

この作品をシェア

pagetop