南の島のクリスマス(十年目のラブレター)
    それから…目を開けると
    カチカチと妙に大きく響く
         時計の秒針。


 ぼんやりした視界の中で自分が起きているのか、眠っているのか…それとも別の世界にいるのか分からなかった。


   どのくらいしてからだろう。
    自分の置かれた状況を
     理解したのはーーー。


 さっき…タクシーを降りて…雨が降ってきて濡れたからか肌寒く震えてきた時だった。


    ハッとなり起き上がると
   スルッと(すべ)り落ちたタオルケット。
   そこには(あら)わになったアタシの全裸の姿。

   呆然(ぼうぜん)となる意識。
    (よみがえ)る記憶。
     それでも断片的。


 人間って余りにショックな時って…これ見よがしに叫んだりはしないものらしい。ただただ放心状態になり、その後でじんわりと込み上げる感情と涙。


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