南の島のクリスマス(十年目のラブレター)
 頭を左右に振って辺りを見渡すと、今夜着ていたスカートやキャミソール、サマーカーデガン…


     それに下着が……
    ベッド脇に無造作に散乱していた。


 その光景の向こうに准が浮かんだ瞬間、(あふ)れ出す涙。


 亮にスタンガンで気を失わされ、アタシのバッグの中も散乱していることから、亮がアタシの鍵で部屋に入りーーー


    ーー亮に暴行された…。


 記憶はなくても涙が止まらなくなる。周りの全てのものが原形を(とど)めないほど、形も分からなくなるほど(ゆが)んで行く。


  脳は考えることを放棄(ほうき)しーーーーー
       無の状態になる。

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